おにぎり
昔、昔、もう8~9年くらい前になりますが、神奈川で子供たちに教えていた頃、「おにぎり」というあだ名の子がいました。
U-12クラスの子で、顔がおにぎりみたいだからということで、みんなが「おにぎり」と呼んでいました。今、ソラにきている子のように、みんな子供らしい、可愛い子でした。お互いに色々な呼び方をしたり、じゃれたりしていましたが、みんな相手の気持ちを考えられるこでした。
たくさん涙を見たこともあるし、怒った顔も、笑った顔も見たことがあります。そんなみんながつけた「おにぎり」というあだ名。
呼ばれている子は、表情や行動を見る限り嬉しそうで、呼んでいる子も、バカにしているようなところは一切なく、単純に親しみをこめてそう呼んでいるようでした。
さて、このおにぎり君。この子はチームには入っていないので、他の子、サッカーをずっとやっている子に比べると、技術的にはかなわない部分もありました。
でも、この子、プレーが丁寧だったんです。それも一生懸命、丁寧にやるという感じでした。
一生懸命にボールを追って、相手を困らせる。ボールが来ると止めて、丁寧にパスをしようとする。そういう子でした。
ゲーム中ももちろん、「おにぎり」と呼ばれているわけですが、この子がものすごくイキイキしていたのは、きっと、周りとそうやって関わっていたからだと思います。
ただ名前を呼ばれるだけでなく、信頼されてました。「こいつは走る」「こいつは取ろうとする」「こいつはパスをしてくれる」、そう信頼されて、たくさん呼ばれていました。
上手な子は、たまにプレーが雑になることがありましたが、この子はいつも丁寧でした。
ゲーム後に、「インサイドキックが丁寧なやつは誰だ?」と聞くと、みんなが「おにぎりだ」と答えていました。「インサイドキックが正確なやつは誰だ?」と聞いても、「おにぎり」。
みんな、しっかり見ていたんですよね。
“コーチに褒めてほしいから、一生懸命にやってそうな子の名前を言う”というのではなく、みんな、見ていたら自然にそう言いたくなるプレーだったんですよね。
自分にできることを一生懸命にやって、それを周囲が認める、当たり前かもしれませんが、とても大切なことですね。
帰りの車で、今日、初めてソラに来た子の一生懸命なプレーを思い出していたら、「おにぎり」を思い出しました。
この夏、みんな、互いにかかわりあって、成長していきますように。