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2016年5月 6日 (金)

ある日の、あたり前のソラッ子たち(通信171より)

A君が、「ねえ、なんでBは、名前を呼んだりしないのに、みんなからパスをもらえるんだろう・・・」と私に聞いてきました。

A君とB君は兄弟。2人はU-12クラスの中では、一番下の学年です。
A君はパスをもらうためにたくさん声を出していてもパスが来ない時がありますが(状況的にパスが出せない状況の時もあります)、B君はそういう声を出さないのに、確かにパスが行くんです。なぜでしょう。
B君は、「サッカーに対して熱血」という感じではなく(それで全然いいんです。そういう子も、熱血の子も、ここでは絶対にプラスに影響を与え合います)、技術的にも5・6年生の子のレベルにはまだまだ及ばないこともあり、年上の子にとっては、「助けてあげなきゃ」という気持ちもあるんでしょうね。それで、声を出さなくてもパスをたくさんもらえ、また、そういう雰囲気を持つパスなので、映り方も違うのでしょう。
一方のA君は、すごく技術が上がっているのです。上手になっているし、いつも頑張っているように見えます。だから、周りの子も、「助けなきゃ」というよりは、自分達と同じように、「自分から頑張れる」子として見ているのでしょうね。そして、他の子に対するプレーと同じように、パスをする時もしない時もあるのでしょう。
ですから、2人以外の子の動きや関わり方に違和感はないのですが、ただ、同じ兄弟で、一人はそのようにパスをもらえるのに、自分は同じようにしていてもパスが来なければ、ちょっと寂しくなったり、悲しくなったりしますよね。(兄弟でなくてもこのように感じることはあるでしょうから、こうしたことを頭に入れながら、現場では様子を見ています。)
B君の嬉しそうな様子を見て、A君は、うらやましく思ったり、逆に、うらやましく思ったらいけないと考えたり、きっと、色んな思い、複雑な思いになることがあると思います。 最初の質問をする時も、私に一度聞きかけ、「やっぱりいいや…」と。色んな気持ちがあるのでしょう。その様子を見て、気になって聞いてみたら、一生懸命、「普通に」質問してきて。 A君の気持ち、色々な気持ちを想像しながら、私は必要な内容を必要な量だけ(ここには書いていない内容も含めて)、答えました。
さて、そんなことがあった後のゲームで。
やっぱりB君はパスをたくさんもらっていました。
A君は、B君にパスが行く理由を少し聞いたとはいえ、それを見てきっと複雑だろうなと…。
この日、そのような質問をしてきたということは、この子にとっては、ちょっと整理に困っている状態になっていたということなのかもしれません。 そうならないように、ここ数か月、特にA君の様子には気をつけてきたのですが…そのような状態になってしまったのでしょう。それぞれの子の優しさや良さが生み出していることなので抑えつけるのはもったいなく、みんなを抑えずにA君をフォローしようとしていたのですが、それがうまくできませんでした。(ごめんなさい。)
ですから、その質問を受けた時には、「そうか…。さて、今日、どうしようかな」と。
幸い、周りの子たちにたくさんの力があるので、こういうことがあっても、ある程度の筋道は考えられます。それがこの空間の強みです。子供たちの力がすごいんです。
この日は、「6年生にそっと話すのがベスト」だろうと。
その後は、きっと何とかしてくれるだろうなと。あとはタイミングを計るだけ。 ですが、そのタイミングが難しいんですよね。
この日のゲームでは、A君がボールを取りに行く時、なんか、すごく一生懸命で。「俺だって」とか「なんでBだけ…」とか、色んな思いが含まれていたかもしれません。だから、少し、激しくて。そこには悔しさもあるように感じて。 …そして、相手の子の足を蹴ってしまうこともありました。大ケガをさせるような雑さや荒さはありません。ただ、蹴られた側にとっては、文句を言いたくなってもおかしくない、そんな感じの蹴り具合、蹴られ具合です。特にこの日は5年生のC君(この頃、ドリブルが多めなので)の足に、A君の足がよく当たり…。
最初は、A君も「ごめん」と謝れましたが、その後は謝らないことも。これは気づけていないのか、気づいているのか、とても微妙なところです。ただ、そのタイミングで私がそこに入っていったら(この日は)ダメだなと。大ケガをするような形にはなっていないので、あと少しだけ、様子を見ようと。まだタイミングを作れる状況でもないので。 ですが、その後、(蹴られた)C君が、ちょっと怒り、プレーにその気持ちが入ってしまい、ボールを取りに行く時に、必要以上に相手に強めに当たり…。それまでは平気だったのですが、ちょっと、C君のプレーの質に変化が。とはいえ、これも、大ケガをさせるような雑さはありません…。 どういう気持ちなのか。A君に蹴られて痛くて、その怒りが他の人へ出たのか、それとも、自分がボールを取られることが多くなり、責任を強く感じたのか。他の理由から本気モードの上に行ってしまったのか。 …それでも、乱暴さはなく、ある程度動きも心もコントロールしているので、子供のサッカーの範囲内。この辺は、さすが…。ただ、当たり方がちょっとキツイですね。 そして、ボールを取りにいく時、今度はC君が、普段、仲良くしているD君の足をちょっと蹴ってしまいました。
先ほど書いたように、ある程度コントロールできているので、蹴ってしまいましたが故意ではなく、また力もそこまで強くありません。でも、D君、痛そう…。しかも、C君は謝らず。
このままでは、6年生に話す前に、色々なところが壊れてしまいそうなので、中に入って聞きました。
ただ、私はこの時、蹴った側のC君に、「大丈夫か?」と声をかけました。 細かい心までは確認していませんが、C君がこんな風に相手の足を蹴ってしまうのは、その前に自分がA君に蹴られたことが原因の一つにはなっているでしょう。だから、私はC君に対して、「大丈夫か?」と聞いたのですが、普通は逆ですよね。この場面ではC君は蹴った側なので。 でも、この時に、蹴られたD君に「大丈夫か?」と聞けば、C君は、「俺だって蹴られたんだ」となるでしょう。 そうしたら、自分なりに耐えていたC君の良さが出ないままの形になり、しかも、こうなれば、C君の足を蹴ったA君を注意する必要が出てきます。でも、スタート時の質問や様子から、できれば、そのタイミングではA君を注意したくはなかったのです。 ですから、その場では注意をせず、違うタイミングで、それぞれの子に話すようにしたくて。
D君の普段の様子を見ているので、この時はC君に声をかけることができました。 そして、次に、D君を呼び、なぜ、C君がD君の足を蹴ってしまったのかと言うことを説明。 普通、自分を蹴った相手に注意せず、逆に心配するような声をかけたら(しかも、蹴られた自分に対しては心配する声がかけられていない)、プレーが悪くなります。 D君はそんなことはない子ですが、誤解をしたままプレーを続けさせるのは良くないので、一応、説明を。
D君への説明 - この子には、C君のプレーの理由を話さないといけません。 「今日は、ある子がCの足を蹴っちゃってる。だから、たぶん、Cのプレーがあんな感じになった」と私が言うと、「わかってる」と。A君が蹴っているということもわかっているようなので、この日の最初にA君から私に質問があったことも話しました。そして、「きっと、Aはこういう気持ち(先ほど書いたような、悲しいような、複雑な気持ち…)だから、今日は注意したくないんだ」と私が言うと、「うん、わかってる。大丈夫」と。…すごいな、すごいですよね、D君。優しくて、強くて。ありがとう、です。
続いて、C君を呼び、さっき、A君がC君の足を蹴った時に、A君のことを私が注意しなかった理由を説明。
D君にした説明と同じです。 すると、「ああ、わかってるよ。大丈夫」と。私がもう少しA君の気持ちを説明しようとしたら、「なんとなくわかるから、大丈夫」と。 う…すごい。なんとなくわかっていたんですね。だから、蹴られた後のプレーも微妙にコントロールできていたんですね。この子にも、ありがとう。
そして、その後、6年生に話を。みんな、B君に対してはすごく気をつけて見ているし、また、B君も性格的に色々なことを年上の子に話すので、自然にそういう関係が強まりますが、そのせいでA君に対する感じ方が薄れてしまっているかもしれないので。 だから、A君がその日、私にこんなことを質問してきた、ということを話しました。
6年生の子たち…普段、ふざけているようなこともある子たちですが、こういう話はスッと吸収するんです。すごいんです。
そして、6年生にそんな話をした後で、さあ、ゲームの続きを。
ですが、A君は足が痛いと言っていまして。だから、6年生が声をかけて走らせようとしても、走れない時もあって。ただ、その足の痛さには、きっと色んな思いも詰まっていたと思うので、できれば、何かを感じて帰ってもらいたい、そう思っていました。 少なくとも、最初にした質問に対する別の答えを、自分で感じて帰って欲しいと。 でも、走れないかな、A君。そして、走らせられないかな、6年生。 …と思っていたら、さすがさすがの6年生。そして、A君。
「足が痛い…」という感じで立っているA君の足に、6年生からのパスが当たり、そのままゴール。 「マジ?」の流れです。私はウヒャヒャ。そういう奇跡的な場面(そうなる~?的な場面)をたくさん見てきましたからね。 そして、それが元になり、A君の目から赤さが消えました。実は、このゲームを始める前、A君の顔を見ると、目が赤かったんです。でも、その赤さが消えました。その後も、6年生のパスは正確で、強く、優しく。そして、A君はその後もゴール。今度はボールを蹴る足も固まっている、力も入っている。
残り数分ですよ。もう、すごいでしょ、子供たち。
こうした時に、自分の技術を、友達のために使える子供たち。そして、さらに自分の力を高めていく子供たち。そして、また、その力を友達のために、自分たちのために…。 本当にすごくて…ありがとう、です。
※ここに登場していない他の子も、もちろん、グッドですよー。それから、今回は周りの子に助けてもらっているように思えるA君、B君ですが、この2人が他の子に与えているプラス面もたくさんあるんですよ。

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