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2010年10月16日 (土)

ある保護者の方の心配を解消します! 

(2010年9月 通信No.101より)

ある方が、お子さん(高学年)が所属しているチームの戦績をちょっと・・・いや、かなり心配していました。
「全然試合に勝てないんです!」ということですが・・・「それは心配だ!」なんてことはありません。
通信の「おまけ」でこれまでに何度も取り上げてきましたが、子供を伸ばそうとするコーチは、公式戦でも子供たちに課題を与えたり、簡単には自チームが勝てないようにしたりするものです。ですから、勝てないこと自体にはまったく問題はないのです。
これだけの説明では安心できないかもしれませんので、もう少し説明させて頂きます。
どうやらこの「勝てない」チームは、「パス禁止」で試合をすることもあるようです。
きっと、チームとして試合に勝つというよりも、個人を育てようとしているのでしょうから、他の課題を与えることもあるでしょう。
個人技術のつけさせ方は色々ありますし、同じチーム内でも年間の予定などで課題の持たせ方も色々あるはずなので、ここでは別に「パス禁止」がいいかどうかは問題にはしません(子供にあった課題の与え方が大切です)。
重要なのは、コーチがちゃんと個人を育てようとしているところです。
(勝手な予想ですが)キーパーもジャンケンで決めたり、全員がやるように順番で回したりしているのだと思いますが、こういう感じで試合をしていて勝てないことは、別に問題ありません。
ちなみにその方のお子さんは、スクールのゲームでもボールをとにかく追いかけ回しています。
勝つためにゴール前でずっと立っているようなことも、勝つために「得」になるようなことも別にせず、純粋にボールを追いかけ、サッカーを楽しんでいます。ボールへの欲求はかなり強いです。もちろん、負けるのは好きではないようです。
こういう様子を見ても、今のところは、試合に勝てないことがこの子の成長にマイナスになっているとは思えません。
(もともと、レギュラーと補欠の区別がなくていい年代なので、めずらしくはありませんが)試合でも全員がちゃんとプレーできているようですし。
おそらく、努力や練習態度等により、出場時間に差はあるでしょうが、色々と考慮しながら、子供にプレーする機会を与えるようにしているのだろうと思います。
技術で選抜して試合をする場合よりも負けることは多くなるでしょうが、これでいいと私は思います。

技術を基準にして試合に出るメンバーを絞ると、試合に勝つ確率は上がります。負けることが少なくなるかもしれません。
ですが、試合を行う日は多くの時間を使いますから、その場にいる子たち全員にプレーする時間を与えなくては、試合に出ない子はその日、そこにいても上達できません。
試合に出ない子は、一日中サッカーの活動をしながらも、ほとんど運動をしないということになるかもしれません。
それでは技術が上達するはずがありませんから、次に試合をする時も、(技術を基準に選ぶなら)前回試合に出なかった子が出場することは難しいでしょう。
これを繰り返すと技術の差は開く一方です。
さらに、技術差は開く一方ですが、試合に出ている子の技術がどれぐらい伸びるかと言えば、その時間プレーすることに相応しい大きさほどには伸びないように私は思います。
なぜなら、そういう形で試合に出ることが多くなっている子は、普段の努力に影響が出てくることも少なくないからです。
技術差はすぐには縮まりませんから、上手な子はちょっと練習で手を抜いても簡単には(試合に出ていない子に)技術力で抜かれることもなく、次の試合に出ることができます。
ですから、「ちょっと手を抜く」ことが自分にとって良くないことだと気付きにくくなることもあります(技術があるために試合に出ることがほぼ決まっているような子、チームの中心選手がそうなってしまうのを見たことが私は何回もあります)。
ところが、こういう選び方をしないチームではこのようなことが起きません。
長期的に子供の成長を考えた時に、試合に負けることよりも心配なことは結構あります。
まだ、複雑なチーム戦術など必要ない年代ですから、チームとしての戦い方を「見て覚えること」が「プレーすること」よりも勝るということはないでしょう。
一人一人が伸び伸びとプレーする時間を持つこと、これがとても大切です。
試合を多くやるような場合は、この点に特に注意が必要です。

*ちなみに、技術でメンバーを選ぶのであれば、普段から技術を養える、技術を見れるような練習をする時間が必要で、子供たちの技術を正しく見れる目も必要です。

また、私はたまに全然関係ない地域の子の試合を(偶然)見ることもありまして・・・
どの地域の子供のサッカーにも、共通する部分があるので、ちょっとお話しさせて頂きます。
ある日、「その地域の強い」チームと、そんなに大会などには出ないと思うので戦績はわかりませんが、「個人の技術はまずあるだろう」というチームの練習試合を見かけました。
「その地域の強い」チームを相手に、「個人技術のしっかりしている」チームは、優位どころではなく、完全に技術の差を見せながら試合をしていました。
キーパーはおそらく順番かジャンケンで決めたのだと思いますが、グローブもつけていません。
そして、キーパーでもボールを持つと(ボールを取られたら失点する場面でも)平気でドリブルします。
キーパーも、他の子も、ボールを持つとだいたい5~10人くらい抜いて行きました。
誰かがドリブルをしている時でも、(ボールを取られた場合に備え)「バックが相手の攻撃に備えている」ということはまったくなく、ボールを奪われた場合は、奪われた本人や他の子がどんどん取りに行く感じです。以前に書いた、「ポジションは一応あるけど・・・」という感じでしょうか。
この試合、「強い」とされているチームは「組織」で対抗しようとしていましたが、その「組織」は、相手チームの「個人」技術に完全に翻弄されていました。相手は誰がドリブルしても、一人で何人も抜きゴール前まで行ってしまうのですから・・・。しかも、たぶん全力ではありません。
こんなに差がつくものかと思うかもしれませんが、積み重ねとはこういうものです。
積み重ねている途中ではわからないこともありますが、しっかり積み重なると当然成果は出ます。
長い間、子供の将来を考え、個人の力を伸ばすことにこだわってきた場合とそうでない場合とで、個人技術に差が出ないわけがないので・・・。一回一回の積み重ねは大きいのです。

今年開催されたワールドカップでの日本代表の戦いで、「組織力」とか「協力」などがクローズアップされましたが、それ以前に、もちろん、一人一人、個人としてもとても高いスキルがあるのです。それがあった上での日本代表の組織、協力、チームとしての一体感なのです。
日本代表がこれだけ活躍した後では特に「組織、組織」となりそうですが、子供の場合は、動き方や戦術に関しては、「組織でどうのこうの」という前に、まずは個人として必要な力を身につけさせること、これが大切です(そういうことをしながらでも、チームワークは育めます)。

それにしても、まだ子供の段階で技術にこんなに差があると、「上には上がいる」という感じで嫌になるかもしれませんが・・・そういうのを引っ繰り返すのも努力次第。
技術差は、あくまでも「今の時点」でのもの。
「差」は、努力次第で縮まる可能性は大いにあると思います。
だって、まだまだ技術の身に付く年代ですから。
それに、この先何年も、サッカーを好きであれば続けるでしょうから。
プロになった人の話で、「自分よりも上手な人はたくさんいた」という話をよく聞きますが、きっと、それは謙遜ではなく、本当の話だと思います(もちろん、昔から常に一番という人もいるでしょうが)。
大切なのは、その時に自分がどれだけ努力できるか、努力を続けられるか、なのでしょう。

さて、ちょっと視点が変わりますが、こういうこと(個人技術の差を見せつけられる機会)があった時には、指導者としてはチャンスです。思いきり方向転換をするチャンス。
これまでに「組織」として戦い、その結果として得てきた「メダル」や「賞状」といった外的なものよりも、子供たちに対して、プレー自体に興味を持つような動機付けをできるかどうか。
「チームの勝ちを優先」から、「個人の伸びを優先」にできるかどうか。
― こういう話をすると、「個人技術の教え方がわからない」という声を聞くこともありますが、そういう場合は、これまでも言ってきましたがとにかくミニゲームをやらせるといいでしょう。
1チーム2人から6人くらいにしてミニゲームをやれば、子供たちは勝ちにこだわりながらも、自分がサッカーを楽しむためにたくさんボールや相手を追いかけて、すごく上手になっていきます。
一日の練習が「ミニゲームだけ」でも大きな効果があるでしょう。
自分たちだけでの練習ではメダルや賞状をもらうことなどはありませんが、「プレーすること自体を楽しい」と思う気持ちがきっと育つと思いますよ。メダルや賞状をもらうということで動機付けを強くしてしまうと、プレーできなかった残念さをあまり感じなくなったり、自分が思う存分ボールを触っていなくてもそれをつまらないと思わなくなったりすることがあります。こういった、外的なものを得る嬉しさの方がプレーする面白さよりも勝ってくることは、とても注意が必要なのです。逆に言えば、そうならないチームは安心なのです。
さて・・・「全然試合に勝てないんです」という、この保護者の方の子が所属しているチームは、メダルや賞状を手にすることはあまりないようですが、子供たちがサッカーへのモチベーションをなくしていません。これも安心なポイントです(実際、その子はめちゃくちゃ上手になっています)。
書こうと思えばもっと書けますが、これぐらい書けば安心して頂けたと思いますので、このへんで。

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