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2010年9月26日 (日)

ある6年生の成長

2009年9月 通信No.85より

ある子について、ずっと気になっていたことがありました。

ボールが自分のところに来れば、いいテクニックを使うし、練習したワザにも挑戦をする、でも、「ボールがほしくてたまらない!」という感じではなく、ボールを相手に取られてもしつこく追いかけることはなく・・・。練習への取り組みは、比較的一生懸命・・・。
「サッカーが大好きなのか、そうでもないのか、どっちなんだろう?」と不思議でした。「そこまでサッカーを好きではない」ということが悪いと言っているのではありません。「友達がやっていたから何となく始めた」人が名選手になることもあります。スタート地点、好きになるスピード・段階は人それぞれでいいのです。ただ、この子が、今、どの段階にいるのかがわかりにくかったので。そして、気になっていたことをそのままにしておくわけにはいかなかっただけです。
サッカーが好きな子は、ボールを取られると悔しくてすぐに取り返しに行きます。ボールを取った相手をしつこく追いかけます。実際には「悔しい」とか思う間もなく、体が反応していることの方が多いかもしれません。ですが、チームなどで、いわゆる「ポジション」というものを与えられると、与えられ方によっては、次第に、そういう動きを抑えるようになることがあります。
この子の場合も、もしかしたら、そんなに貪欲にならなくてもパスがくる経験をしてきたのかもしれないと思いました。その結果、「ボールがほしくてたまらないから、動きまわって触る」ことが減っていき、そして、それでもパスは来て、パスが来たらある程度のプレーができて評価されるから、それでも満足でき、次第にボールを貪欲にほしがることが減っていったのではないかと・・・。
さて、この子にどうしよう ― (予想では)こうなったのは、行動を抑えるという“行動”の結果。
ですから、同じく行動で思い出させることに。「行動は動機を強化する」作戦です。
とにかく、ボールを追いかけさせる。損か得かではなく。そして、そうやって追ってボールを触った時の達成感を思い出させる。そうすれば、もっと追いたくなる。これを繰り返していこうと。
ということで、夏前から特に「ボールを粘り強く追うこと」を強く指示し、夏休み中にこの達成感を体に染み込ませることに(夏空中の、この子に対するウラテーマでした)。
すると、ボールを奪われた後に、取り返すことが無理そうな状況でも追いかけることや、実際に取り返すことが増え、ボールを持った時の動きもさらによくなりました。そして、ゲームでも「サッカーが大好きな子のするような動き」をたくさんするようになりました。大成長です。
相手をとことん追うと、相手の動きに対応するために不得意な動き、自分の経験したことのない動きをします。その中で様々な動きを吸収するため、ボールを持った時の動きも、より多様に、スムーズになります。小学生年代は、持久力などよりも、こういった体の動きの器用さを、より吸収できる時期です。
この子・・・その後の成長が、以前の何倍もすごいんです。
パスした後の動きが積極的になり、相手ゴールに向かう動きがかなり増えました。それを見て、「○○みたいな動きをできるようになったな」と言ったのですが(○○という選手は1980年代のスーパースターの一人)、その2日後には、○○選手がある大会で見せた、取られそうで取られない、倒れそうで倒れないドリブルを見せたんです。これも、バランス感覚や体のコントロールが以前よりも利くようになったからでしょう。こうしたこと(○○選手を思い出させる動きを2回続けて見せたこと)だけでも驚きですが、さらなる成長も、この子は見せてくれました。

この子は、明らかに以前よりも周囲の子へ気を配るようになりました。

(ある日のブログより抜粋します)
「一人の子がまず休憩から戻り、「ボールちょうだい」と言い、渡すと遊び始め、もう一人が来てパスが生まれ、次に来て・・・(中略)・・・人数が増えてくればボールを触れない子も出てきます。ボールは一つだけなので。また、休憩から戻っても、遊びに入っていいものかどうか考えて入れなかったり、恥ずかしくて入れなかったり、なんていう子もいます。そういう子を見つけて、「ほらよ」とパスをする子もいます。それを受けて、嬉しそうな顔で中に入ってくる子もいます。
そう、気持ちを受け取りなよ、なんて思います。友達から気持ちを投げられてもそれを受け取ろうとしなければ遊べないじゃん。投げる方だって勇気がいることがあるんです。それに答えなきゃ、遊べないじゃん。それができずに「つまらない」になっても私は助けません。だって、友達だって、「入りたいけど、どうやって入っていいかわからない」子の気持ちを受け取って、パスをしているのだから。それに、チャンスは一度だけではないから。友達はその後も投げてくれるのだから。こういう場面でも、受け取ろうとする子は伸びていきます。
うまくできるかではなく、受け取ろうとしているか、それを友達は感じるのでしょう。
べつに失敗しても、頑張っていたらボールは行きます。・・・」

・・・ブログには今回の話に関係のない文章も入っていますが、この中の、「入れないでいる子」に「ほらよ」とパスをしたのがこの子です(こういうことって簡単そうですけど、今はゲーム機の中で遊ぶことが多いからなのか、子供同士の接点が減っているからなのか・・・難しいようですね)。
そして、この2日後には、練習のやり方がわからずに困っている4年生に、「こうやるんだよ」とさりげなく教えてあげ、(4年生の子は最初はなかなかできなかったのですが)その4年生が苦戦しつつもやっとできた時に“絶妙のタイミング”&“絶妙の強さ”で「うまいじゃん」と言ってあげて。
その評価は大きすぎず、小さすぎず。適当な大きさの「うまいじゃん」なので、その4年生の子にも、すっと入っていったんでしょう。嬉しそうな顔をしていました。
本当に、一生懸命な子や他の子のことを、以前よりも考えられるようになったと思います。
・・・2回続けて、それぞれの日に「技術と心」の両面での成長を見せたのは、成長が確かなことである証拠でしょう。子供発の「サッカーが好き」という気持ちが、成長していく時に最も大切なことだということも、よく表していると思います。
ちなみに先程のブログの、その前の文では他の6年生の子に触れています。
(これです↓)
「・・・年代によって、受け取れるメッセージや気持ちの内容・大きさは違いますよね。この子は本当にしっかりとメッセージや気持ちを受け取ることができる-だから伸びる。練習前や途中途中ではふざけたことを言ったりしても、ちゃんと受け取っている。自分でもどういうプレーをすべきかわかっていて、それを周囲に流されることなくやることができる。自分を失いそうになっても、それに対して言葉をかければ、自分自身で戻ってくる。これからの成長は、「×3」くらいでは行くでしょう」

・・・6年生が色々な面で成果を出し始めてきたこれからの数カ月、とても楽しみですね。
6年生と絡むことのある4年生、5年生の伸びも期待できます。相乗効果での伸びはすごいんですから。 

*「今が一番いいかも」と本人が感じるほどの今回の大成長。この大成長の最も大きな要因は、この子の素直さだと思います。ものすごく生意気なヤツですけどね。
実際に、「ある場所で待っていればボールが自然に来る」「ボールを取るために動き過ぎたら、試合の勝ち負けなどの面で損をする(本当は損でもなんでもないのですが)」という経験が多い場合、今回のような指示を出してもなかなか元に戻れないこともあります。6年生にもなれば、誰かに言われたことをやるのが嫌なこともあるでしょうし、実際に、言われたことを「ただやる」ことは良くないこともあります。ですが、私の場合は、これまでのその子の様子やチームでの動きを見た上でアドバイスをするようにしています。
普段は生意気でも、真剣な話はきちんと理解してくれる子が多いことにとても感謝しています。

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