あっかんべーの子が成長を
(2009年2月 通信No.78より)
ちょっと遅いですけど・・・高校サッカーの話でいきましょう。
昔見ていた子で、高校に進学する直前、入寮する直前に会った子がいました。会ったのは3年前なので、今、高校3年生。彼にとって、冬の全国高校サッカー選手権は今回が最後です。
あれから3年、どんな風に成長したのか、登録メンバーに入ったのかどうか、ちょっと気になっていました。
そこで、お正月に、「えいっ」と実家に電話して聞いてみると、メンバーには入れなかったとのことでした。
もちろん、レギュラーで試合に出ている方が、その子が嬉しいでしょうから私もその方が嬉しいですけど、何と言っても「まだまだ」成長過程ですし、大切なことがたくさんあります。ですから、実は、「もしかしたら、メンバーに入っていないかもしれない」と思って、電話をしたんです。
その子の技術を疑うわけではありませんが、全国大会の常連校なので競争が激しいことは予想できます。今回もその高校は県代表として全国大会に行っていますが、その中で、メンバーに選ばれなかった場合はどんな気持ちでいるのか、サッカーを続けるにしても、続けないにしても、自分ではっきりとした考えがあるのか、なんとなく決めてはいないか、それが気になって電話をしました。
電話をした時には、その子は不在で、お母さんから話を聞きましたが・・・、すごく嬉しい話を聞きました。
その子は、今回のメンバーには入れなかったようですが、フットサル(イメージ的には小さなコートでやるサッカーのようなスポーツ:正確には違いますけどね)の方で、将来的なことに関して、いくつか話があったそうです。
なるほど、メンバー入りはしていなくても、技術的には他メンバーに負けていないということですね。さすが、たいしたものです。あ、これが嬉しかったのではありません。
この子、話のあったフットサルではなく、「まだサッカーを続けたい」から、大学でサッカーを続けることを選んだんです。これが嬉しかったことです。
もし、この子が、今回メンバーに入れなかったことから、自分で納得していないような形、サッカーへの思いを残したまま中途半端な形でサッカーをやめるのなら、それはしない方が良いということを伝えようと思って電話したんですが、この子にはそんなこと不要でしたね。
自分の進路については、(もし、なったとしても)プロになった場合の、その後のことも十分に考えて、決めたようです。そんな成長した考えをできるとは・・・小学生の頃の彼からは、想像が・・・。
そして、今は先生になりたいという夢もあるみたいです。やんちゃな自分のような子を何とかしたいから、先生になりたいという夢を今、持っているようです。そのために、教員免許も取りたいと思っているみたいです。彼がこう考えるようになったのは、高校で出会った先生の存在がとても大きいようでした。こういうことも、とても嬉しいです。
今、持っている夢は、もしかしたら、追いかけていくうちに、また、形が変わるかもしれません。
でも、夢を持ち続けるのは、本当に大切なことだと思います。
夢に向かいながら新たに見つける夢は、成長した自分だからこそ見える新しい夢です。
夢に向かって一日一日努力する中で、その日までの自分よりも一日分成長して、そういう成長を繰り返して新たな夢を見つけた時の自分は、走り始めた時の自分よりも成長している自分です。こうして、夢を持ち続けて成長し続けることができれば、どんなに素晴らしい人生だろうかと思います。
あ、そうそう、ちなみに、この子は小学校高学年の時、所属していたチームを辞めています。
大切なのは、チームに所属しているかどうかではなくて、サッカーを続けること。思いきりサッカーをすること。そして、サッカーを好きだという気持ちを持ち続けること。
この子は、別にサッカーが嫌いでチームを辞めたのではありません。
こういう子は他にもきっといるでしょうから、彼のような子が、その後、ここまで成長してくることは、色んな意味で嬉しいですね。
さて、ここまで成長したこのサッカー少年の、小学生の頃は・・・・なかなか面白いヤツでした。
練習中も冗談を言ったり、超真剣だったり。バラバラのような感情、行動に思えるかもしれませんが、根底に流れているのは「サッカーが好き」という気持ちなので、そばにいた私には表面上の行動は別に不自然には見えませんでした。子供とはこういうもんです。練習後には、早く帰した方が家の人も安心だろうと思い、「早く帰れ」と何度も言うのですがなかなか帰らず、冗談ばかり言っていて。その時に話していたのは、その日の練習のことや、学校のこと、特に話すことがない時には、お互いの足の短さをネタに「お前の足なんて30cmじゃん」「コーチなんて3cmじゃん」とか・・・そんなことでしたが・・・。自転車に乗ったまま柱をつかみ、ずっと冗談を言っていたり、おにぎりを食べながら冗談を言っていたり・・・。そして、さようならの前には気持ちを思いきり入れて「あっかんべー」を見せたりして。あの小僧が、ここまで精神的にも技術的にも、人間的にも成長するとは。本当に、親御さんから話を聞いて、「へぇー!」の連続でした。・・・本当に子供たちの持つ可能性はすごいですね・・・って別に驚いたりはしませんけどね、それが子供ですから。
「全国大会で活躍する」・・・素晴らしいことですし、その子を知っている者とすれば嬉しいことです。
でも、周囲の人に恵まれ、周囲の人と関わりながら、高校の3年間で体も心も大きく成長したこと、子供の持つ可能性をちゃんと私たち大人に教えてくれたこと、こういうことが本当に嬉しかったです。
これからも、この子が周囲の人に恵まれ、また、自身でもこれまで同様に努力を続け、さらに成長を続けて行くことを願っています・・・なぁんて思わなくても、成長していくことでしょうが。
この子の努力とこの子を支えた全ての人に、感謝!
*小学生の頃に所属していたチームにそのまま残るような子だったなら、この子の場合は、もしかしたら、サッカーを嫌いになっていたのかもしれません。嫌いにはならなくても、枠にはめられたような、“その時の指導者的に正解”と思えるだけの小さな範囲でのプレーしか覚えていけなかったかもしれません。
私はこの子のプレーを見ていて、「サッカーが好き」という気持ちを常に感じられましたから、この子が辞めたくなるほどのチームであれば、辞めた方が良かったのだと思います。それは逃げるとか、とりあえず自分に合っていないから合っているところを探すとか、そういう安易なものではないと思います。このように、「サッカーを好きな子なら耐えられない」環境や「サッカーが好きな子が、だんだんサッカーから興味をなくしていく」環境があることも事実です。
もし、皆さんの中にも、チームなどで指導する立場にある方がいらっしゃいましたら、ちょっと振り返ってみて下さい。ソラの保護者の方の中にはそのような指導をしている方がいないことを望みますが(普段、よく話をして下さる方も多いので、そのような方は安心ですが)、これからどんどん伸びていくかもしれない、大きな可能性を小さくまとめてしまうような、指導者の考えの枠の中に入れてしまうようなことをしていないか、少しだけ振り返ってみて下さい。
*子供たちは、友達がサッカーやチームをやめるという経験をするかもしれませんが、それは、ただ弱いとか、サッカーが嫌いだとか、仲間を裏切るとか…決してそんなことではないということを親御さんからも教えてあげて下さい。
*昨年末、ある子に「ねぇ、ソラの子から、将来、日本代表が出たら嬉しい?」と聞かれました。私は「あぁ、嬉しいね。でも、出なくても嬉しいよ」と答えました。思いを全て話すと長くなるので、思いきり短くして話すと、子供たちには生きていってほしいと思っています(短かっ!)。
でも、サッカースクールなので、サッカーが上手になりたいと思っている子の気持ちを裏切らぬよう、最低限、サッカーを上手にさせることは達成した上で、そういう自分の勝手な思いを持つようにはしています。日本代表になるかどうかなども、もし代表になれば、その子が嬉しいだろうから私も嬉しい、知っている子が頑張っている姿を見ることができるから嬉しい、そういう感じです。なので、日本代表にはならなくても、その子がサッカーから得たものを大切にして、どこかで頑張っていて、幸せに暮らしているのなら、しっかりと生きているのなら、それで嬉しいです。もちろん、子供たちは日本代表を目指しているでしょうし、私が勝手にその気持ちを軽く見てはいけないので、選手として成長させるためにも、練習では持っているものを全て出していきます。
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