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2010年9月22日 (水)

「うちの子、上手になっているかなぁ」

(通信No.15より)

「うちの子、上手になっているかなぁ」という声をたまに聞く事がありますが...
もうすぐ今年度が終わります。この時期の練習は、これまでに練習した内容を組み合わせたり、発展させるものが多いので、もしかしたら、年度途中に入った子には、少し難しく感じることもあるかもしれません。但し、もし今の練習が難しくて出来ないことがあったとしても、必ず力として蓄積されるように、計画を立てていますので、すぐに目に見える形で表れることがないとしても、成長していますのでご安心下さい。
―と言われても気になるかもしれませんので、少し、経験上得てきたことをお話させて頂きます....。

以前所属していた団体で、私は、神奈川(2校)、埼玉、東京のスクールでメインコーチをしていましたが、神奈川の各スクールで1年ずつ、埼玉で2年、東京では2年半と、年間を通じての指導を様々な地域で行うことができました。特に東京のスクールでは、それまでと違い、長期間継続して子供達の指導をすることができたことで、一人一人がスタート時から練習を重ねるにつれどのように成長していくのか、じっくりと成長を見守ることができました。
この経験は、私にとってまさに宝です。
様々な地域、環境。一つ一つのスクールで、集まる子の雰囲気も違い、グループとしての雰囲気も、各スクールで異なりました。ただ子供の伸びる力のすごさはどこでも共通で、指導する先々で、子供達のすごさに驚き、また彼らのプレーを観て楽しむことができました。
色々なタイプの子がいますが、大きく分けると2つのタイプに分けることができるかもしれません。
一つは指導した事を何でもすぐに吸収してしまう、すぐにできてしまうタイプ。
もう一つはすぐには吸収できなくても時間をかけてしっかりと吸収する、少しずつできないことができるようになるタイプ。
どちらの子も成長しています。大きな差は、ほとんどないと、私は思います。なぜなら、“すぐに吸収できる”というのは、それまでの経験が大きく影響をしているように私には思えるからです。つまり、本人の努力です。一見、“すぐできるようになる”ように見えても、実は、それ以前に、“すぐできるようになる”ための材料を、練習の中で、失敗を重ねながら吸収しているのです。ですから、時間をかけて吸収する子と、すぐに吸収する子との差は、表面的なもの、或いは時期的なものだと言ってもいいかもしれません。本質的には、両方とも素晴らしい、そういうことです。
―さて、東京のスクールで指導をしている時、2年生の子に本当に一生懸命練習をする子がいました。
当時、そのスクールは開校間もない頃で、クラスの在籍者もかなり少なく、2~3人で練習をする事も多くありましたが、その子は毎回練習に元気に来て、ボールを楽しそうに蹴っていました。
ただ、スクールに入った当初は、決して他の子より技術的に優れているということはなく、むしろ周囲の子の方が上手だったかもしれません。ゲームをしていても、ドリブルで相手選手にボールを奪われてしまったり、相手選手からなかなかボールを奪えないこともよくありました。
ただ、この子は本当に一生懸命にプレーしていました。一生懸命というとガムシャラという感じがしますが、実に子供らしく、楽しむ時は楽しみ、挑戦する時は挑戦する。素直で、悔しくても、言葉を信じて、何度でも挑戦する。失敗することがあっても、挑戦した上での失敗なので、その成果が体の奥に蓄積されていることは確実です。自然に、自分の気持ちに素直に、サッカーをしていたように思います。
2年生の頃は、練習したことをすぐにゲームなどで発揮するにはまだ難しく(そこでの完成は求めていませんでしたので、当然それでいいのです)、3年生で練習の内容が身につくのが速くなり、4年生の頃には、周囲の子よりも吸収速度が速く、また技術的にもかなり高い水準になっていきました。
4年生の時点だけでのプレーや練習での吸収の速さを見ると、まさに、“指導したことをすぐできてしまう”という感じでしたが、それを可能にしたのは、それまでの練習、本人の努力の蓄積でした。
すぐには結果に表れなくても、それでも確実に成長していたのです。
残念ながら、私がその子のプレーを観ることができたのは4年生の途中までですが、6年生になった今(当時)ではU-12のナショナルトレセンの選手に選ばれています。
ナショナルトレセンに選ばれたのは本当にすごいことなので、私もとても嬉しく、一瞬、私の指導がとても良かったかのような錯覚にも陥りましたが(はい、確実に錯覚です。すみません)、当時指導していた子がみんなナショナルトレセンに選ばれたわけではありませんし、親御さんの支え、所属チームや他の方の指導、それに何よりも本人の努力が大きな比重を占めているということはいうまでもないことです。
ただ、毎回本気で指導をし、2年半の間、週2日という貴重な時間を一緒に過ごし、その成長を近くで観ることができた者としては、こういう「子供の持つ可能性のすごさ」は絶対に子供たちに伝えなければならない、また、可能性は伸ばさねばならない、と思っています。
上達というのは、はっきり目に見えることもありますし、なかなか目に見えないこともあります。成長の速さや成長する部分は一人一人違い、様々です。
ただみんな間違いなく成長しているので、「うちの子上手になっているのかなぁ」と不安をお持ちの方は、「成長している」という部分だけはどうぞ安心して信じて下さい。“みんなすごい”です。

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