20cmの大きさ
(2009年6月 通信No.83より)
ある日のゲームでこんなことがありました。
ボールがラインを割って、相手チームの子がスタートをしようとすると、そのすぐ前に立って邪魔をする子が・・・。相手チームのキックを邪魔するのは悪いことではないのですが、近すぎて、その近さでは相手の子がスタートすることができないのです。
こういう時は、相手の子や周囲の子が「近すぎる」と言うと、たいがいの場合、渋々と少し離れるものです。すぐには離れないこともありますが、そういう場合でも、2、3回そういうことをすると、自分にも得にならないと思い、少し離れるようになります。
・・・が、この子は離れない! (“この子”と書きますが、よくあることで、こういうことをする子はたくさんいます。普通のことで、この子が特別ということではありません。)
実はこの子はその前の週も同じことをしています。その時は友達が背中を優しく引っ張ってくれたおかげで、非難が強まる前にゲームが再開され、セーフ。こういう優しい友達に感謝です。こういうことがないと、非難がさらに強まっていきます。その時に、渋々でも離れるのならいいのですが、それでも離れないと(実際には、意地になってしまうこともあり離れにくいのですが)、そして、それを何度も何度も繰り返すと、さすがに周囲の子もまだ子供なので、今度は友達との距離が少しずつ開いていってしまいます。だって、ゲームを早くやりたいし、たくさんやりたいし。だから、こういう、注意をしてくれる友達の存在はありがたいのです。
…しかし、その日、この子はその後も同じことを続け、その日のゲームでは“セーフ”の回数は1~2回くらい。この子は友達が引っ張ってくれても(←ほどよく冗談っぽく、ほどよく優しく、ほどよく注意気味に・・・私にはできない芸当でした)下がらず、引っ張られて下がってしまってもすぐに元の位置まで戻ってしまうことを何度も繰り返していました。しかも、引っ張ってくれた友達に対して「強く引っ張った」と思ったようで、その後もちょっと文句を言ったり。子供なのでわからないんでしょう。なので、この時は、「さっき、○○が引っ張ってくれたけどさ、…」と、友達が引っ張ってくれたから、その後もみんなでゲームをできたということを説明しました。少しだけでも、わかればなと。
さて、そんなことがあった翌週の「ある日」の同じような場面だったのです。
この時も同じように、相手のすぐそばに立ちすぎて、相手がスタートできず困る状況に。
すると、先週同様、ある子がピョコピョコと背中を引っ張りに。
それでもやっぱり下がろうとはしないで、相手のすぐそばにいる。
・・・・ふ~ん、どうしようかな・・・・と、ちょっとため息をつきかけた瞬間、発見!
この子、前は、引っ張られて20cmくらい下がってしまうとすぐに元の位置に戻ったのに、この時は戻らないでいます。相変わらず、引っ張った子や周囲の子が「下がれよ」と言うような距離にいるものの、でも、それまでのように意地になってさらに前に行くなどしないで、その20cmくらいずれたところに留まって邪魔をしてる。それでもかなり相手はやりにくい距離で文句を言いたくなるような邪魔の仕方ですけどね。
・・・確実な進歩。邪魔する態勢も、周囲に言い返す言葉も雰囲気もそれまでと同じなのでわかりにくいですけど、これは進歩です。以前よりももっと友達の気持ちを感じるようになっています。友達と自分の「どっちが正しいか」の時の“押したり引いたり”を、少しずつ覚えてきています。この子にとっての成長。
小さなことのように思えることでも、こういう成長が生まれる場にしたい、そう思っています。だから、こういうことにもっと気づけるようになりたいと思っています。甘く見てあげるとかとは全く違います。私、かなり厳しいです。
実は、こういうことって、(恥ずかしい話ですが)現場に一緒にいても気づかないこともあるんです。もう長く一緒にいる子も多いので、他のことが気にかかり、こういう小さなことに気づかなくなることがあるのかもしれません。この子のおかげで、小さなことの大きさを、再確認できました。感謝です。現場では、もちろん、「こらっ、てめー」の方が多いですけどね。
わずかでも必ず成長を見せてくれる子供たち、大きな成長を見せてくれる子供たち。
たくさんの子がソラに来て、色んなことを私たちに教えてくれます。
そんな子供たちに応えられるように、これからも努力していきたいと思います。
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