子供の一日・・・すごいものが詰まっています
2010年6月 通信No.96より
ある日のU-12クラスのゲームで。
A君がキックインの時に、インサイドキックに挑戦。さっきまで、この子はキックインの時に違う蹴り方をしていたのですが、私がインサイドキックでも蹴ってみるように言ったので、この時に挑戦したのです。
そうしたら、失敗。その失敗を見て、そばにいたチームメイトのB君が笑いました。
A君は「笑うなよ!」と怒りました。さらに、「俺、絶対にBにはパスしない!」と。
B君は、私がA君にインサイドキックをするように言ったことを知っていたと思いますし、この失敗をバカにして笑ったとは思いません。ですが、その時は、笑ったB君に、「お前がそこでパスをもらおうとして声をかけてやれば、A君は簡単にキックをできるから失敗することはなかった」とサラッと言いました。
A君にも、A君なりに考えなくてはならないことがありましたから、ちょっと言いました。
A君は、普段、同じような場面で自分が失敗した時にゲラゲラ笑うことがあります。友だちが失敗しても、(バカにするのではなく)自分の失敗を笑う時と同じようにゲラゲラ笑うことがあります。
普段も一生懸命なのに、「ゲラゲラ」する子なのです。その子が、この時は「笑うなよ」なのです。
大人がそばで見ていると、これは笑ってもいい、これは笑ったら怒るだろうとわかることもありますが(私はよく間違えますが)、子供はまだわからないことが多くあります。
B君は、この時、普段はこういう時にゲラゲラ笑うA君に「笑うなよ」と言われ、ちょっと驚いた顔をしていましたが、そうでしょうね、「あれ?」と思うでしょう。その時の心の動きとか、見えないほんのちょっとのズレで行動や気持ちが変わることがあるんですから、わからないことがあって当然です。
ですが、こういうことがないと、同じことに関して、他の人がどう考えるのかを知ることができません。
ですから、私はこういうことがたくさんあってもいいと思います。
・・・実はこの数分前には、こんなことがあったのです。
ゲーム中(A君とB君は同じチーム)、相手の蹴ったボールにB君が少し触れ、ボールが外に出ました。
相手チームからスタートするはずですが、A君は、B君が最後にボールに触っていたことに気付かず、ボールを蹴ってスタートしようとしました。
この時、他の子が「Bが最後に触ったから、俺達からスタートだよ」と言いました。でも、A君は、B君が触ったとは思っていないので、そのままスタートしようとしています。他の子も、サッカーを早くやりたいので、「どっちでもいいからやっちゃえ」と言っています。
確かに、どっちかわからない場合もあり、そういう時は、「どっちでもいい」時もあるのですが、この時は、B君も自分が最後に触ったことをわかっているようでしたし、「俺たちからだよ」と言った子が正しいのです。それに、自分でわかっているのなら、周囲の子にがっかりされても、正直に言えた方がいいのです。周囲の子も、自分たちボールにならなかったからと言って、正直に言った子を非難してはいけないのです。勇気のいることですし、正しいのですから。こういうことも教えたいことの一つです。
ですから、A君がもうボールを蹴ってゲームは再開してしまいましたが、私は止めました。
私がB君に「触ったの?」と聞くと、「触った」と。おー、エライ、エライ。これでいいのです。
すると、A君が、B君に対して(俺が蹴る前に)「早く言ってよ」と。
「俺達ボールだよ」と言う声を押し切ってスタートしてしまったA君の気持ちもわかりますし、状況的にすぐに言いだせなかったB君の気持ちもわかります。
この時、B君は「なんで俺がお前に文句を言われるの?」と思ったかもしれません。「言う前にお前がスタートしたんじゃん」と怒ってもおかしくありません。実際には、B君はそのようには思わなかったと思いますけど。
実際にどう思ったのかわかりませんが、A君に「早く言えよ」と言われた後に、B君がA君に何かを言おうとしても、ちょっと遮られるような感じで、理由を伝えきれないようだったので、この時は、私の方からA君に(B君が言いだせないのも無理はないということを)補足しました。
こんなことの後での、先程の場面(キックミスを笑った)だったので、B君が笑った理由も、面白かったのか、さっきちょっと嫌な思いをしたからなのか、それとも、(もともと仲は悪くないので)失敗をなぐさめるつもりだったのか、目が合い、何か言わなきゃと思ってつい笑ってしまったのか・・・たくさんの理由が考えられたのです。私的には、どの理由も自然だし、怒るA君の反応も自然だし、A君もB君も「どっちも正しい」と思います。
そして、練習が終了―練習後、ふとみんなを見ると、A君とB君が並んでいました。一瞬ですが。
ただ、すぐにA君が場所を移動してしまいました。
偶然並んだとは思えないので、場所を移動したA君に、どちらが先にその場所にいたのかを聞きました。
先にいたのはA君だそうです。だとしたら、B君はA君がそこにいたのを知っていて、そこに来たのです。
A君がすぐに場所を移ってしまったので、なんでB君がそこに来たのかはわからないままですが、何か言いたかったのかもしれません。謝りたかったのか、文句を言いたかったのか、それはどちらかわかりませんが(きっと聞けば、B君はそこに来た理由を教えてくれたと思いますが、私はべつに聞いていません)。
ただ、A君には、B君がそばに来ていたことは偶然ではなく、何か理由があったからだろうということだけは伝えました。
あとは、A君とB君の心に何かが残ればいいかなと。モヤモヤでもなんでもいいのです。
あたり前のできごとで、この日のうちに無理に解決するようなことではありませんから。
もちろん、その日のうちに解決すべきだと思う場合は、そうなるように促します。
しかし、この時の、この2人のケースでは、時間をおいた方が、より互いの成長につながると思ったのです。
あとはこういうことがあったことをしっかり頭に入れて、継続して見て行けばいいのです。子供の世界には、聞いた方がいいことと聞かないでいいこととあり、また、子供たちの間に何かあった場合も、間に入った方が良いと思われることと入らないでおく方が良いと思われることがありまして・・・。
それに、この2人の場合は、今度会うまでに、今度会ってから、また成長していくことは確実ですし・・・。
・・・・そんなことがあったB君ですが、この日、先程と違う場面では、こんなこともありました。
ある子がゲーム中に転び、ゲームから外れ、コートの横で顔を伏せて泣いていました。
B君はその時に休憩しているチームだったので、泣いている子から離れた場所にいたのですが、いつの間にか、泣いている子の横にそっと行っていて、横に座り、様子を見ながら、色々と話しかけていました。
せっかくなので2人にしようと私は場所を移したので、どんなことを話していたのかわかりませんが、この時は、B君が来てくれて、きっと泣いていた子は嬉しかったと思います。B君は、こういうことに気付く子です。
ちなみに、先程のA君も、誰かが泣いていると(元気の出させ方は色々あっていいと思いますが)、話しかけて何とか頑張らせようとしたり、必死に笑わせようとしたりするタイプです。友達の気持ちを感じる子。
そういえば、B君が初めてソラに来た日、心細そうだったB君に、A君は真っ先に声をかけていたりして・・・。
こんな子供たちです。今回のことが成長につながらないわけがありません。
・・・・ついでに書くと、この日、B君は、練習前に一人でちょっとポツンとしていました。
誰かがそばに来るとちょっと寄り、声をかけそうになりながらも、間が合わず・・・こんな感じを繰り返し、少しすると、一人でボールで遊びだしました。この時はどんな気持ちだったのかな? (こういう時、私は、今までのことやこれからのことを考えて、声をかける場合や声をかけずにただ様子を見る場合があります。)
・・・U-12クラスの練習は80分。
ですが、一人一人、気持ちがグルグル動く、心が揺れる、色んなことが詰まっています。
人と接すれば、気持ちや心に動きが生まれるものです。この日のA君とB君の心の揺れ幅は、きっと大きかったと思います。心の大きさも成長したことでしょう。
・・・ここで、サッカーの話を少し入れておきます。
サッカーでは、できるプレーや、理解・対応できる戦術に幅があるほど、たくさんの楽しいプレーができたり、経験やプレースタイルの違う色んな選手とサッカーを楽しんだりできます。
そして、選手が、できるプレーや戦術理解の幅を広げる要因の一つとして、“タイプや考えの異なる複数”の監督の元でプレーしたり、タイプ・考えの異なる様々なチームメイトとプレーしたりすることがあげられます。
そうしたきっかけを経て、プレーや考えに、「幅」が出て、サッカーをより楽しめるようになるのです。
これと同じように、心の幅が大きいほど、人も人生を楽しめるのだと私は思います。
子供たちにとっては、友だちの一人一人がチームメイトであり、監督みたいなものです。
心の幅が大きく、深くなるような経験を、ぜひたくさん積んでほしいと思います。
そして、人生を思いきり楽しんでほしいですね。
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