格好いいとか悪いとかじゃなく
(2007年12月 通信No.65より)
かなり前に(通信No.21です・・・)、『その時の注意の仕方は、“みんなの前で大きな声で、その子のみに”注意・・・(省略)・・・このような状態では、他の気持ちや感情が混ざってしまって、コーチからの注意や話を素直に受け取ることはできないでしょう。』と書いた私ですが、11月、U-12クラスで1人の子に注意をしました。
それは、(その通信内で書いた)『みんなの前で注意をすることが必要な場合もあるでしょうが』というケースに当たるからでした。
私は練習前に子供とボールのぶつけっこをして遊ぶことがあります。
でも、このぶつけっこ、暗黙のルールがあるのです。当てる場面、当て方、タイミング、ボールの強さ・・・結構あるんですよ、暗黙のルール。
その日、ある6年生の子がかなり強いボールを全く無防備の状態の私に蹴ってきたのです。たまに無防備のフリをすることもあり(ボールが蹴られた直後によけて「残念でした」と言ってやります)、そんなことをこの子もわかっているので、そういう状態で蹴ってくることは別にいいんです(子供から見て私が気づいているのかはっきりしないような時は、子供がわざと外すように蹴ってきたり、わざと気づかせるように蹴ってきたりすることもあります)。でも、この時はボールが私の手をかすり、さらに手に取ろうとしていたケースに当たり、ケースが落ちました。もしこの球が手に当たっていたらかなり痛かったでしょう。本人もその場に合わぬボールだったと気づいたはずです。
だから、「ごめん」という言葉が出てくるかと思ったのですが、出てきませんでした。
以前、同じようなことがあった時(その時は思いがけずボールがちょっと強めに当たってしまったのですが)、この子は、「あ! ごめん」とすぐに謝ってきました。そういう子です。
この時に謝らなかったのはまだ彼の中ではお互いの遊びの範囲に入っていると思っていたのかもしれないので、ここではまだ彼に強く注意をしようとは思っていませんでした。ただ、当てるボールの強さが遊びの範囲として適当かどうか、他の子供たちも知っておいた方がいいと思い、出欠を取るために子供たちを集めた際、「さっきの強さのボールが手に当たったら大けがをする」ことをきちんと話し、その子にさっきのはしていいことか聞きました。
答えは、「さあ?」でした。恥ずかしくて下を向いてしまう、内容を理解して困って何も言えない、そういうことなら別にいいんです。気持ちを理解した上でもう一度、合った話し方をします。
でも、「さあ?」に隠れた気持ちは違いました。確かめるため、もう一度、同じことを話し、さっきのはしていいことか、どうするべきか聞きました。それでも、答えは「さあ?」でした。
明らかに周囲の子を意識しています。
悪かったと思うことよりも、周囲への変なプライドの方が勝っていて、葛藤の様子もありません。
ここで私はその子に注意をしました。
「人にケガをさせるようなことをして、その後、自分がどうすべきかわからないようなヤツは帰れ」と言いました。その子は、「それは困る」と言いましたが、そんなこと言われても内容が内容です。内容を認識した後でも、「みんなが見ているから」ということが勝って謝れないような子の「それは困る」という言い分を私が「はい」と聞くわけもなく、「これからこの子を帰すこと」を家に電話で伝えるため、コートに電話を持ってきて、一応、最後の質問。
※これは脅しやポーズでしているのではありません。家に子供を帰して平気か確認する必要もあります。親御さんも理由を知らないで子供が突然帰って来たら驚くでしょう。また、親には伝えられていないと子供が思っている状態で子供だけを帰したら、途中で子供が寄り道などをして練習の終了時間に合わせて家に帰るようなことをしないとも言えません。安全面からも、お家に電話をする必要があるのです。
さて、さっきのはやっていいことか、どうするべきか。
その子は、「やってはいけないこと、謝るべき」と答えました。
この年代でみんなの前で、過ちや失敗を認めるのは大変なことでもあります。でも、そんな周囲への見栄や変なプライドで過ちを認めないというのは強さでも格好良さでもありません。そういう姿勢を受け入れていくのであれば、それは弱さを育てているようなものです(通信No.21の時とは全然違うのです)。こういうことはみんなが知っていかなくてはならないことです。
そこで、周囲の子-「さあ?」と答えた子を笑って見ていた子、「面白い」「格好いい」「勇気あるな」・・・そんな目でその子を見ていた子供たちにも同じことを言いました。
「人にケガをさせてもいいと思っているヤツにここでサッカーを教える気はない」こと、「みんなが見ていたって、恥ずかしくたって、謝らなくてはいけないことがある」こと等々・・・。
ちなみに、変な上下関係なんかを教えたいのではないので、その子が「謝るべきだ」と答えた後で、実際に私に対して謝らせるようなことはしていません。そんなことをさせたいのではありません。
その直後、ストレッチを4・5年生と6年生の2グループに分けて行い、私は4・5年生とストレッチをしましたが、子供たちに「みんなの前で間違ったことを認めることが大変なこと」を話し、「その子がちゃんとみんなの前で“謝るべきだ”と自分で言えたことは勇気のあることで、さすが6年生だ」と言うとみんなもそれはわかってくれたようでした。
・・・当たり前ですが、「6年生で卒業したらもう終わり」なんて思ってサッカーコーチをしているのではありません。子供たちが中学生、高校生になった時を頭においてコーチをしています。
中学という年代はとても大切です。
子供たちは卒業後、そういう年代に入っていきます。
子供から大人に向かっていく中で、「ちょっと悪いフリをするのが格好いい」「周囲への見栄から、本心を隠して行動する」、そして「そういう行動をすると周囲から認められる」そんな状況にも、子供たちは置かれることもあります。
そんな中で、さっき書いたような弱さを育てていってしまうことはしてほしくありません。
また、どういうものが強さなのかということも知ってほしいと思います。これは、今、少しでも教えておかなくてはなりません。
6年生の子と一緒に過ごせる時間はあとわずかです。
一日一日を大切にしていきたいと思います。
※後日談・・・というか後「年」談? ・・・この通信を書いてから何年もたち、中3になった今も、この子はちょくちょく学校帰りにスクールに顔を出しています。嬉しいことです。
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