アクションとリアクション
(2005年9月 通信No.28より②)
続いて技術ネタです。
以前の通信で後回しにしていた「アクションとリアクション」についてお話したいと思います。
ちょっと前にお話したように、テクニックに挑戦することは絶対にいいことです。技術面の成長にとっても、精神面での成長にとっても。
挑戦していく中では、成功するまでの過程で当然うまく行かないケースも出てきますが、それでもやはり価値があるのです。「できなかったことができるようになった」そんな体験は体にも、心にも必要です。
さてさて、そのあたりのことは色々お話していることがあるので、今回は、アクションとリアクションの時の、技術面での上達・成長について考えてみましょう。
挑戦する、自分からアクションを起こす、上達する上でこれが大切なことは誰でも感じていることです。そして、(外から見ている私達は)プレーヤーがアクションを起こした時に出る結果を見て、あぁ失敗した、成功した、といったことを外から感じたりします(本当は“失敗”ではないですけど文章をわかり易くするためにここでは“失敗”と言ってしまいます)。失敗を重ねなければ、より強い上達はできませんから、失敗も大切だということをみなさんよくご存知でしょう。
-と、ここまで見ていると、アクションのみのようですが、実は、いい失敗の時には、すんごいリアクションが生まれています。
逆に、ほどよい、可もなく不可もなくという結果の時には、“すごい”という程のリアクションはあまり生まれていないことが多いので、ちょっと残念だったりします。
ちなみに、ここで私が言っているリアクションとは、行動を起こした後に(こうなるだろうという予想のようにならなかった時に)、「あれ!?」とか「やべぇ!」と思ってとる“とっさの対応”のことです。
このとっさの対応の時に“バリバリバリバリ”と音を立てるぐらいの勢いで技術面が成長しています。
ちょっと具体例を挙げてみます。
例えば、シザースという「ボールをまたぐワザ」に、相手がいる状況で挑戦する場面を考えてみましょう。
ちなみにシザースとは
「左足のアウトサイド(外側)で、ボールを左に蹴るふりをして、ボールの前を(足を)素通りさせる(またいでしまう)。
相手の選手はその動きにつられ自分から見て左側に動いてくれるので、(その結果空いた)右側にボールを押し出して抜いていく」こんなワザです(わからなかったら子供に見せてもらいましょう)。
・・・ゲーム中、さぁ、ボールを持ちました。相手選手が前にいます。
ワザにチャレンジ、左足でボールをまたぎます。相手がちょっと騙されました。でもここで「シザースはしたけど右に行ってもたぶんボールを取られちゃうな」と思って抜きにいかず、そのままの状態をキープ。
-こんなプレーがたまにあります。子供にとっては、またぐだけで大挑戦の子もいますから、そういった子にとっては、これでも充分に成長したと言えます。ドキドキする中でまたげることはすごいですから。またいでいる時に“バリバリバリ”(成長音)という感じです。
でも、既にその段階まで成長している子にとっては、それだけではこの伸び幅と同等の成長は生まれないでしょう。またげて「ナイス」、ボールも取られてないから「まぁまぁ成功」という感じですが、それではまぁまぁの成長、もしくはそれまでに成長している部分の認識というぐらいになってしまうかもしれません。それでも価値はありますが。しかしこんな時には「ナイスプレー」などとは優しくない私は言いません。
そこまで来ている子は、勇気を持って抜きに出るべきです。「ダメかも」と思ってその状態を保つのではなく、「きっとOK」と思って抜きに出た方が、“バリバリ”音が聞こえるように私は思います。もちろん、ダメかもと思って行かないことも、決して悪いことではありません。自分で判断しているのだし、これもリアクションと言えばリアクションと言えます。しかし、可能性のある子供だということを考えると、もっとすごい成長をする力があるので、ちょっともったいないリアクションのとり方だと思うのです。中途半端では大成できないことは、リアクション芸人の方々が証明しています。同じきっかけでも様々なリアクション! さすが。見習わねば・・・ってちょっと違う?
話を戻して(いつも、すみません)・・・でも、そこ(ダメかもと思ってその状態をキープ)を突き破ったら、また面白いことが体験できるのです。「行っとけ!」という感じです。
ボールを失うかもしれないけれど行く価値があるの? と思うかもしれませんので、チャレンジした時、思うようにいかなかった時にどんなことが起きるのか考えてみましょう。
さて、またいだ後、(またいだ時点で「きっと行けた」と思い)抜きに出ました。ボールを押し出します-抜けたー! これ最高です。すみません、いきなり最高を出してしまいました。
話が終わってしまいますのでもう一度(ちゃんと説明しないと石が飛んできそうなのでもう一度チャンスを)。
パターン①またぐ、相手はつられて動いたはずだ、ゴー(GO)! って“騙されてないじゃん!”-“やべぇ”と思った次の瞬間、足が勝手に伸びボールをキュッと止める-「ナイスターン!」。(パチパチパチ)
しかもスピードの変化、“速い状態から急に止まる”も大成功!
パターン②またぐ、相手は騙されただろう、ゴ...ととと、まだいる!? -“やべぇ”と思ってGOを中止、でも足は動いちゃってるから、そのままボールに触らないようによけろ、またいじゃえー「すげぇ、ダブルシザース!」。(目パチクリ)
2回またぐことができればどっちに行くのか相手にはわからず、本当に困ります。
こんな具合です。この“やべぇ”の次の瞬間、とっさの動き(上の例ではキュッと止まる、さらにまたぐ)をする時に、“バリバリバリ”と音が聞こえます。空耳? というかsola耳? ・・・←中途半端・・・ね、中途半端だと良くないでしょう? あ、石は投げないで下さーい。
予想と違ったことに対応するのですから、予想通りになった時に比べ動きは大変になります。だからこそ、体の調整、スピードの調整がものすごいレベルで必要になり、それまでに体に持っていた部品(単独の技術)が総動員されます。頭はフル回転状態、意識も集中状態だからこそ、それが可能なのです。そして“バリバリ”となるのです。次からは、この一連の動きも、すでに持つ技術となります。
シザースというワザは失敗に終わったようでも、違う部分が大成長です。もちろん、シザースの失敗も体が覚えているので、次に挑戦する時には、さっきよりも動作が大きくなったり、スムーズになったり、スピーディーになります。また意識的にもポイントを意識するようになるので(「フェイントのあとはもっとスピードをあげなきゃ」など)、繰り返すごとにシザース自体も完成度があがります。さらに繰り返して行くうちに、行くべきか、その状態を保つべきかの判断がより高い基準でできるようになります。一石二鳥どころではありません。
ところでこの“バリバリ”の時に出るとっさの動き、例えばボールを足のウラでキュッと触るとか、体をキュッと止めるとか、これが身についていなければなりません-これを生み出せるようにしているのが、無理やり(或いは方法を限定して)練習で行っているステップであったり、その日のトレーニングテーマとはかけ離れているようなボールタッチだったりします。“とっさ”の状態でも出るように、基礎部分の力を養えるよう定期的に刺激を与えています。
また、うまくいって相手を抜いた後に次の選手にボールを取られてしまったり、シュートまでいけない時などもあるでしょう。そんな時に、今度は相手選手を抜いた後のボールコントロールやスピードアップの部分、周りの状況を把握した上でプレーする必要性など、もっと良くした方が良い部分を認識できます。学年が上がり頭の方も成長してくると、2人目のディフェンスまで意識してフェイントをかけたり、周囲の選手とのタイミングを計るためにフェイントをかけるなど、一つ上の目的を持ってプレーできるようにもなります。こういった、よりレベルアップするためのヒントをつかむこともできるのです。
成功しても、失敗しても、かなり気持ちの入った状態なので、体、(今回は技術面を中心に話していますが)頭に入る刺激はかなり強いものとなり、その結果、体、頭の両方の面で成長。相乗効果ももたらす。これでもかというぐらいのナイス状態です。これが、アクション、リアクションで起こる、いいことです。
こんなことが得られるので、挑戦はいいことなのです。
ちなみに、年齢が低いうちや経験がまだ浅い時期には、あまり、アクションを強調しなくてもいいでしょう。
その前に、単純に体がビュンビュン動くようになっていた方が、すばしっこい動きができる方がいいと思うので、鬼ごっこのように瞬間の動きに反応できる方が魅力的です。ボールが自分のところに来たらゴールの方に突き進んだり、自分の好きなワザをやってキャッキャしている(動き回っている)方が自然だし、伸びるでしょう。
アクションとリアクション、このような感じです...私が思うに・・・「えー、さんざん説明して最後は“思うに”だと~!」という言葉が聞こえてきそうですが・・・。
あ、石、まだ持ってます? 逃げろ! (これもリアクション)
バリバリバリ~(聞こえたぞ、確かに聞こえたぞ~。こうしてコーチも成長するのです!)
※リアクション効果での成長はこれまでに会った数々の子供達が証明しています。ご安心下さい。
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