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2010年9月25日 (土)

子供たちが最後に選んだ空間

(2008年4月 通信No.70より)

・・・ここにいる間に子供たちがどう育つか(育てることができるか)、卒業する時に子供たちを一番いい状態に持っていけるか、それを考えてスクールをやっています。今回は、最も大切な、子供たちの卒業時の様子をお伝えします。

<月曜日コース・U-12クラスの最終週>
この日、私は「注意しない宣言」をしていたので、まわりからそっと見ていました。
最後の日にできることは実はありませんし・・・。
もちろん、あると言えばありますが、ここまで接してきて、最後の最後に修正を加えなくてはならないスクールなんてやってきていないつもりです。子供たちはこれまでに十分に色んな経験をしてきたので、あとは信じます。どうしても(子供たちでは)気づかないことを指摘するくらいです。
試合と同じです。
練習でやってこなかったことを、いきなり試合で「やれ」と言っても選手はできません。試合前までに、実はコーチのすべきことはほとんど終わっているのです。
さぁ、この日は色んな表情が一つのゲームの中に見られました。
笑った顔、怒った顔、真剣な顔、つまらないという顔、冷静な顔・・・。
以前に通信で何度か書いた、「子供のサッカー」をしていましたね。
そんな、子供のサッカー、子供の社会の中で、お互いに絡んでいた、関係しあっていたのは本当に嬉しかったです。
冗談を言いながらトォキック(つま先のキック:正確性が他のキックより劣ります)をずっと繰り返していた子も、真剣にボールを追いかけていた子にパスをする時にはインサイドキック(←正確性の高いキックです)を使ったり(←本当に、ずーっとトォキックをやっていたのに、いきなりインサイドに切り替えるんですよ!)、真剣にボールを追いかけていた子も、冗談を言っていた子が自分の方に近寄って来てくれると楽しそうな顔になったりして。
それまでマジメな顔をしていた子でも、冗談ばかりを言っていた子が自分にも絡んで来てくれた時はとても嬉しそうで、その後の休憩中の表情がとても明るくなっていました。
本当に表情って変わるんですよね、関わり合いの中で。
大人の私が無理に作らせるような顔じゃなくて、外から見ていて本当にいい顔でした。

<火曜日コース・U-12クラスの最終週>
・・・練習が終わると、ある子が「今日は○○のせいでつまらなかった」と大きな声で言いながらコートの外に出ました。
自分のゲーム中に、コートの外から(休憩中の)○○君が「ボール出た」など色々と言っていたのが嫌だったのでしょう。それを聞いた○○君はちょっと気まずそうな顔でコートから出てきました。
すると、ちょうどその2人と仲の良い6年生が、「ちょっと怒りすぎ~」と、○○君を傷つけないような、しかも怒りを吸収するような、2人の関係を悪くしすぎないような声をかけました。
おそらく、この2人の仲がいいことをわかっていたから、関係が悪くなりすぎないようにお互いをつなげようと思ったのだと思います。その場にいた私は、優しさから出た声だと思いました。みんなの前で「今、あの子がこう言ったけどさ・・・」と言うと、「は? 俺、そんなこと言ってないし」と大きな声で言っていましたが・・・。本当に素直じゃない・・・照れ屋さんが多く、良いことをした時ほどみんな本心を言わないので困ります・・・。
この子は超~生意気な態度を私によく取ります。でも、こういう友達の気持ちがわかればいいと私は思っています。
もちろん、「超生意気」は「あり」ですが、本人が気づいていないことは私もちゃんと話をしますし、そういう時は、ちゃんと話を聞いています。
もうだいぶ前になりますが、この子の蹴ったボールが、出席簿を取ろうとしている私の手に当たりそうになったことがありました。ここでは詳しく話しませんが(←詳しい内容は通信No.65の「おまけ」に載っています。読んでいない方もいるかもしれませんが、内容が長く・・・まとめ下手なのでここでは載せません)、それ以来、この子は私に同じような状態でボールを蹴ってきたことが一度もありません(お、いい話?)・・・ボールではなく、直に私を蹴ってきますから・・・ってバカタレ! (やっぱり)・・・でも、ただじゃれているだけですので。
ちなみに、今回登場した「怒った子」「○○君」「6年生の子」は、前通信No.68(「持って帰れ」)に出てきた3つめのグループ(私に何度も注意されていたグループ)だった子です。子供たちのこういう少しずつの成長が本当に嬉しいです。
私が嬉しいのは、「コーチの言うことを聞くようになる」ということではなく(←超~生意気なのは変わらず、「聞かないこと多々」ですから!)、その起きた内容を少しずつ体に蓄えて、お互いに関係し合って成長していけるということです。最後の練習でも、みんな、ちゃんと成長した姿を見せてくれましたね。

<金曜日コース・U-12クラスの最終週>
この日の最後のゲームは、コーチとして見るのが非常に苦しいゲームでした。
どんな感じだったかというと、真剣にやる時があったり、笑いながらやったり、冗談を言いながらやったり・・・これらがほどよくミックスされている感じでした。みんなそれぞれのモードに関わっていて、どのモードになってもその空間から離れる子、みんなと距離が生まれていく子はいませんでした。
みんな、それぞれのモードで「一生懸命」と言うこともでき、最後に彼らがその空間を選んだならいいかと思って見ていたのですが・・・・、途中から一人だけ、違う表情、違う動きをする子が出てきました。
この子は、真剣にやりたいようです。みんなが笑っている場面でも、顔を赤くして、次の動きをしようとしていたり、次に自分のパスを受け取ってくれる人を探そうとしたりしています。そして、その度に、周囲との動きに少し差が生まれているのです。気持ちが強くなればなるほど、差が生まれていくのです。
今は、笑ってしまう場面がたくさんあって、楽しみながらするようなサッカーも、真剣にプレーしてたくさんの達成感を得られるようなサッカーも、どちらも良いと思います。サッカーの好きさ、精神的な発達度で、楽しみ方、楽しいと思う部分が違うだけなのです。
この年代の子供たちには「形式的に真剣にやること」を覚えさせることはさけたいので、自然にサッカーが好きになっていく中で、真剣にやった時の悔しさと嬉しさ、それがかけ合わさって生まれる達成感を覚えていってくれたらと思います。その自然な、笑いもあるサッカーを経験せず、形だけの真剣モード(やらされるようなサッカー、子供の顔が引きつってしまうような、表情に無理のあるサッカー)を先に経験すると、本来、自然に成長していけば真剣モードのサッカーが楽しいと感じる年代に入った時にふと疲れてしまったり、その時に初めて笑いながらの楽しみモードのサッカーを知ることで極端にそっちに走っていってしまったりして、もっと強い達成感、成長を経験できなくなってしまう可能性もあると思うのです。
さて、この子は、その真剣モードで得られるサッカーの楽しさを、今、自分から得ようとしています。もちろん、この子だって普段はゲラゲラ笑いながらプレーすることがたくさんあります。ですから、急に、そういう部分の楽しさを全て捨てて真剣モードだけのプレーしか楽しめなくなるなんてことはなくていいと思います。
ただ、自分で、本当に「自然に」それを見つけようとしているなら、それは邪魔してはいけませんし、その子の行動は決して間違っていないので、そんな子がつまらないと思う空間は良いものではありません。
「笑いモード」と「真剣モード」―どちらも子供たちには大切なもの。でも、放っておけば、みんながお互いをわからぬまま離れていく状態。なので、少しだけ、口を挟ませてもらいました。本当は、最後の練習なので、私は注意も、誉めることも全くせず、自分達だけで最後まで雰囲気を作って行けと言っていたのですが、この時は、口を出しました。
しかし、言葉で少し説明をしてもすぐにみんなが変わるわけではありません。
「笑いながら」と「真剣にだけ」の、どちらかを強要するようなことは言いません。どちらも大切なので。極力自分たちの力で良い方向に持っていけるようにするための、最低限必要な言葉しか言いません。「これだけで気づいてくれ」という気持ちでした。でも、雰囲気は、ある程度までは変わりそうになっても、目標とするレベルまでは到達せず・・・。
それでも強制はしたくなかったので、雰囲気がまとまるようにチームのメンバーを変えました。
さて、チームメイトを変え、ゲームが始まり、様子を見ると・・・「笑い・しゃべり」チーム(学年が上の子が多い)が得点を重ねていきます。どんどん得点差は開いていきます・・・。
学年、経験を考えれば自然な現象です。でも、得点や勝敗より、同じ「真剣にプレーしたい」という気持ちになればいいと思っていたんです。それまで、一人だけ「超真剣」にやってしまっていた子が、周囲の子が自分と同じ気持ちでプレーしてくれていることを感じられるくらいにはなって欲しかったんです。
でも、「真剣にプレーしたい子」のいるチームは、「笑いながら」でも楽しめる子が多いので、雰囲気的にはそれまでと大きく変わらず・・・。
同じチームにした子が、プレーでの接点が少しでも多くなれば自然に超真剣モードに傾いていくかと思ったのですが、そこまで感じる段階には、まだ来ていなかったようです。まだ4年生の子が多かったので、無理もないのですが。
なので、1人、2人に、「笑いながらやるサッカーと真剣なサッカーと、どっちのサッカーも良いのだけど今は“真剣だけ”でやってみて」と言いました。
最後の手段です。笑いながら楽しいサッカーをやっている子達の雰囲気を否定しないまま、みんなで同じ方向に行ければと思いました。
すると、「真剣モード」チームの「真剣」が本物になり始め、それまで離れてしまっていた「真剣にプレーしたい子」とチームのみんなのプレーが合うようになりました。そして、実際に得点を入れ、その後の形勢は逆転してしまいました。
・・・それにしても、「なんで?」と私は思っていました。
「笑いながら」チームの6年生、5年生の子は、どちらかと言えば「しゃべりながら」の楽しさを選ぶ子ですが、どちらのモードでもプレーできる子です。しかも、その日は、何度か「友達の気持ちも考えながらプレーすること」を話し、普段ならそれで十分に気づく子たちだったのに。
「何で今日は最後まで変わらないのだろう・・・」
終了しても考えていました。
そして、練習後の彼らの雰囲気を見て、「あぁ、そうか」と思ったのです。
―会えるの、最後か。
この日、本当なら翌週の木曜日の練習に参加できるはずの6年生の子がいました。この子がこの日の「お笑い・おしゃべりチーム」の雰囲気を強く作り出していたのですが、この子は先週の木曜日の練習を休み、さらに翌週の練習にも参加できないことになってしまったんです。だから、この日、金曜日の練習に参加したのでした。
そして、この日に来た子たちの中には、本来、先週この子と一緒に練習できていたはずの子、来週も一緒に練習できるはずだった子がたくさんいたのでした。先週、友達の休みを知って「なんで来ないの?」「えーっ!」って言ってましたから。
頭では私の言うことをもっとわかってくれていたのかもしれませんが、もう会えなくなる友達とのチームを楽しみたいという気持ち、会いたいとか一緒にいたいとか、話したい、楽しみたいという気持ちが強かったんでしょうね。
なるほど・・・練習後の子供たちの顔、関わりを見てやっと気づきました。何とも頭を使わせる、楽しい子供たちです。

<木曜日コース・U-12クラスの最終週>
木曜日は休日の関係で「振替練習」という形になり、木曜日コースの練習が年度末の最後の練習となったのでした。
さて、本当に最後です。どうなる?? ? 
そして・・・ほぅ、やるね・・・そう思う空間になったのでした。
まったりしている時はまったりしつつも、聞くときは聞く。見る時は見る。なるほど。楽しみつつ、でも外さない。
ゲームでは、さっきまで仲良くしていた子同士がバチバチぶつかりあい、でも、楽しい雰囲気も残して。超真剣マジメモードとお楽しみノビノビモードを自然に操っているような。
勝敗にこだわる6年生も、(自分でドリブル突破できるような場面でも)4年生の子にパスをして絡ませて、なかなかいいサッカーをしていました。
この日は5年生がいなかったのに。
4年生と6年生だけ。間の5年生がいないんです。いつもなら、6年生と4年生の間を5年生が(雰囲気的に)うまくつなげる役をするのですが、その5年生がいない。
・・・なのに、ちゃんとつながっていました。
さすがに今年度最後の練習だし、子供たちが気づかぬうちに雰囲気が悪くなりすぎたら、私が中に入っていこうかと思っていましたが、その必要はありませんでした。
練習後はみんな、なかなか帰らなかったですね。話したり、じゃれたりしていて。
本当に見ていて楽しくて、無理がなく自然な空間で、子供の表情も良くて。
しんみりなんてせず楽しいまま「さよなら」。でも、また「いつでも会える」という雰囲気の「らしすぎる」終わり方でした。
成長・・・・・・・していましたね、思っていた以上に・・・。

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以上が最後の週の様子でした。
なんか、曜日ごとに全然文章の量が違いますが・・・文章の長短と子供たちの成長の良し悪しとは一切関係ありませんので。文章が短いのは「書くことがなかった」とかではないですからね~。なので、このアンバランスなままにしてあるのです。
この文章は、それが起こった日の夜にパソコンに打ち込んでいますので、長く打ち込めないこともあるのです。
また、起きている内容によって長い説明が必要なことも説明が短くていいこともあるので、短い時は短いのです。
打ち終わった後で、「短いから長くしよう」なんて無理にふくらますようなことはせず、文章を整える程度に留めているので、こんな感じになっています。・・・文章、整ってないですけどね・・・・。
それに、曜日は違っても、ソラの子はソラの子。
一応、わかりやすくするために曜日毎に書きましたが、実際には、曜日に関係なく、同じようなことが毎日起きていて、今回書いたようなことは、実はどの曜日の子にも当てはまることなんです。
そう、どの曜日も、まさに「子供」がたくさんの、大きな価値のある空間でした。
その集大成の最終週、本当に楽しかったですよ。
またこの一年、子供たちの未来に向かって、走っていきます。・・・な~んて格好よく決めてみたりして・・・。
よろしくどうぞ! 

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