「子供が声を出さない」というご相談
(2007年4月 通信No.56より)
よく、「声が出ない」ということで、ご相談いただくことがありますが、「声が出ない子に対して、みんなの前で“声を出すように”と注意をしても、出せなくなるのが普通です」という話をしています。注目されるのが恥ずかしい場合も、まだ失敗を恐れている段階でも、責任感が強い場合でも、他にも様々な理由から、こうなるケースが多いのです。なので、まずはその原因を確かめ、次に、みんなの前で注意をするような感じではなく、声が出せるようにもっていくのが普通です。もちろん他にも方法は色々ありますが。
※通信には書きませんでしたが、「声を出さない」ことに関するご相談が多いので、このブログの一番下に、もう少し、説明を書きますね。
・・・・・・が、4月に入ってからまだ10日しか経っていない段階で、私はこの、“みんなの前で「声を出せ」”という注意の仕方を、U-12クラスの2人の子にしています。
以前、この子達が声を出せなかった頃は、一般的な働きかけをし、声が出るようになりました。が、今回はその時とは違い、“みんなの前で”「声を出せ」というやり方です。
4月からクラスのメンバーが変わったので、これまでのように自然に声を出すことができなかったのでしょう。おそらく、そのクラスに馴染んでくれば、放っておいても声が出るようになるのでしょうが、その前に、(既にその子達はその高さの壁は乗り越えているので)今度は自分で(壁を)乗り越えさせないと。馴染んでから声が出るんじゃ、前に、まず馴染むように働きかけた後の状況と同じになってしまいます。冷たいようですが、すでに「声を出す力」のある子に対して、また前のようなやり方で声を出させるのでは、その部分での成長はまだまだということです。誰かが状況を整えないとできないのでは、まだ本当の力ではありません。ですから、今度は自分で「挑戦して」その力(ここでは声を出す)を出して欲しかったのです。それができた時に初めて、その(声を出す)力がついた、その部分は成長したと言えるのだと私は思います。もちろん、この2人はそれくらいのことを乗り越えられると確信しているからこそ、このような働きかけができるのですが。これで成長しなかったら、当然、責任は(彼らの成長段階を読み違えた)私にあります。
6年生の子は、特に厳しい状況にしました。厳しく働きかけた後に出た声は、たった2回。しかも小さめの声。この2回の声をどう評価するのか。
私は、「プレーし易い状況でのチャレンジ」の何倍も大きな努力だと思いました。しかし、周囲の子はまだそこまで感じられなかったようで、それがちょっと残念で悔しかったですね・・・。 ・・・・・・・・・と、ここまでの予定でしたが、今日(さっきのことがあった日の2日後)、すごいことがあったので続けます。その子がまた練習に来ました。とりあえず登場時はいつものように私にちょっかいを出し、練習中もいつもの感じです。
そして、さぁ、ゲームの時間。
現時点での、素の状態での彼を見るために、この前、最後に見せた成長が本物かどうかを見るために、私は2日前のことなんか覚えていないような顔で、いつものように、ゲーム開始。
開始して数分―嬉しかったですね。すぐに友達の名前を呼び、プレーに絡む。以前、声を出していた頃の何倍も大きな声でボールを呼ぶ。もう、嬉しくて嬉しくてたまりませんでした。
・・・コーチングの基本の一つに、「コーチは、全体を見れる所に立つ」というものがあります(練習のセットや形態によっては、それが難しい場合もありますが、基本の一つです)。
が、そんな基本なんか無視してグラウンドに立たなければならない時もあります。見たいけれども見てはいけない、無関心を装って、背中を向けて、背中で感じ取らなければならないこともあります。ただただ心の中で応援することしかできない時もあります。
先ほどの、2日前の、厳しい働きかけをした時も、そうでした。こちらから働きかけた後は、(彼が成長しようと思えば乗り越えられるのであれば)ただ見守るしか、してはいけません。ついさっきまで厳しく働きかけ、本人が今、苦しみながら、それでも乗り越えようとしている時に、まだ乗り越えていない段階で、ちょっとつまずいたから優しくするなんてことをしたら、せっかく乗り越えられそうなのに、その力をつけられそうなのに、その邪魔をしてしまうことになります。彼の努力が無駄になってしまいます。もちろん、助けが必要な場合は助けますが、彼がより大きな成長をつかむために、本人の力、やろうとしていることを黙って見守らなければならない時があるのです。
2日前は実はそんな感じだったので、その後の彼のプレーを見て、本当に嬉しかったんですよね。成長したのは彼であって、私がこんなに嬉しがってもしょうがないんですけどね。
4月、U-12クラスは「プレーに関わること」「自分が今の自分よりレベルアップすること」を目標にしています。努力すべき部分、挑戦すべき部分は一人一人違います。一人一人がそれを意識するように、また、みんなが他の子の挑戦、苦しさをわかる場に、気付ける場に、もっとしていきたいと思います。もちろん、他のクラスの子も。
◆子供が声を出さないことについて(補足)
まず、その原因を考えることから始める必要があります。これは、簡単なようで難しいこともあり、さっと解決しないこともあります。原因を把握することが難しい場合は悪循環に陥ることも、解決できないこともあります。また、原因を把握できた場合で、時間がかかることもあります。
声を出せない・出さないことについてはご相談頂くことも多く、また、ここに来て声を出せるようになったと言って頂くことも多いので、すごく簡単に例を挙げますと・・・・
まず、練習中に見るとしたら、個人的なことが原因なのか、グループ、全体として原因があるのか、それを見ます。
例えば、個人的なことの場合だったとして、それでは、原因は何なのか。
その原因が「自信がないから」だと思える場合、では、「なぜ自信がないのか」-自信が持てないのは何故なのか。
・・・というように、改善すべき部分や働きかける部分を見極めてから、アプローチをかけていきます。
「自信がない」という場合でも、そこに結びつく理由は様々です。いくつも原因が考えられます。実際には、「自信がない」だけが直接的な原因ではないこともあるくらいです。自信がなさそうな子でも声を出せる子はいますし、自信がなさそうな子でも声を出せることはありますから。
このように、原因を見極めていくことは難しいこともあります。ですが、まずはここを把握した上でないと、働きかけを行っても改善が難しい場合もあります。
私も現場でこの課題の改善を行う場合は、色々と状況を把握して、その上で、丁寧にアプローチをかけていきます。
また、現在のサッカー環境や、サッカーだけでなく一般的に子供の置かれる環境や子供の遊び方など・・・そういったものも影響しているように、最近は感じられます。
「声が出なくて」・・・という場合、原因を把握することが難しい場合は、まず、色んなものを取り払うことから始めるといいかもしれませんね。
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